短時間・単発の就労マッチングアプリを通じて簡単に人材を確保できる便利なサービスですが、労務管理上の重要な注意点があります。
厚生労働省が発表したガイドラインをもとに、事業主が押さえておくべきポイントを詳しく解説します。
スポットワークとは
スポットワークとは、短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くことを指します。特に、スポットワーク仲介事業者が提供するアプリを利用したマッチングや賃金の立替払いを行うものが対象となります。
労働契約の当事者を理解する
重要なポイント:事業主とスポットワーカーが直接労働契約を締結
- スポットワーク仲介事業者とスポットワーカーが労働契約を結ぶわけではありません
- 労働基準法等を守る義務は、労働契約を締結した事業主に生じます
労働契約締結時の注意点
労働契約の成立時期
面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人では、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で労働契約が成立するものと一般的に考えられます。
労働条件の明示義務
事業主の重要な義務:労働条件通知書の交付
・労働条件を書面で明示することは事業主の義務
・スポットワーク仲介事業者が代行する場合も、事業主は内容を確認する責任があります
・未明示の場合は労働基準法違反となります
キャンセル(解約)に関する注意点
労働契約成立後の解約については以下の点に注意が必要です:
・解約権留保付労働契約を締結する場合は、合理的な事由が必要
・スポットワーカーにのみ不利な内容は避ける
・事業主都合の直前解約は労働者保護の観点から不適切
・別の就労機会を見つける時間的余裕に配慮した解約期限の設定が必要
賃金・労働時間に関する注意点
労働時間の考え方
準備行為・後始末も労働時間に含まれます
・指定の制服への着替え時間
・業務終了後の掃除などの後始末
・事業主の指示による待機時間
休業時の対応
事業主都合の休業・早上がりの場合
労働基準法第26条「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、休業手当の支払いが必要です。
・所定支払日までに休業手当を支払う
・休業手当の代わりに約束した賃金を全額支払うことも可能
・事業主の故意・過失による場合は賃金全額の支払いが必要
労働災害への対応
労災保険の適用
・通勤途中または仕事中のケガは労災保険給付の対象
・就労先の事業について成立する保険関係に基づき給付を受けられます
・労災保険料は事業主負担
まとめ
スポットワークは便利なサービスですが、通常の雇用と同様に労働基準法等の遵守が求められます。「知らなかった」では済まされない法的責任があることを理解し、適切な労務管理を行うことが重要です。